翌朝、ベランダに遊びにきた雀の声で目を覚ます。時刻は十一時半。陸はピザ屋のバイトへ行けたのだろうか。

 昨夜の私はメールをチェックしては落胆し、またチェックするという行為を深夜まで繰り返した。陸へ残った微かな信頼が、事故や事件を思わせる。

『陸いる?』

 だから楓にメールを送った。もしも今病院ならばどうしようと、不安も抱えながら。しかしすぐにきた楓の返信が、容易に私の胸を抉った。

『お兄ちゃんはもう、バイトに行ってるよ』

 事故でも何でもなかった。陸は普通に起きて、普通にバイトへ行った。

 暫時思考が停止した後押し寄せたのは、もの凄く静かで、もの凄く大きな憤り。
 気付けば陸の働くピザ屋まで足を走らせていた。彼の終業時刻も知らないが、店の前で待ち伏せすればいいと思った。そんなことまでするのかと、己で己を軽蔑しながら。