辺りはすっかり陽が沈み、川辺を歩く人も疎らになってきた。途中コンビニで買ったコーヒーも、とうに空。陸からの連絡は未だにこない。

 卒業式の時のように、携帯電話の電池が切れたのかもしれない。でもだとしても、帰宅すれば充電ができる。それでは携帯電話そのものを落としたのだろうか。ならば楓経由で連絡をすればいい。迷子。そんな険しい道のりではない。だとすると──

 二次会に行った。これが一番しっくりくる。

 行ってもいいよと私は言った。だからべつに、それ自体は問題ではない。行くのだと決めたことを知らせない。それが問題なのだ。

 陸と私はただの幼馴染。だから、こんなことで苛立つ自分の方が異常者なのだろうけど、自ずと込み上げてくる感情は抑えられない。それと同時に、目からは涙が溢れた。

 健気に待った自分が馬鹿に思えた。陸を信じなければよかったと思った。でも、それでも何度だって携帯電話を(ひら)いてしまう。

「陸の嘘つき……」

 もう一時間だけと決めて待ってみたけれど、結局、陸から連絡がくることはなかった。