その日は朝から晴れ渡り、絶好のバーベキュー日和だった。そろそろ公園へ着いたかな、もう野菜を切り始めたかな、などと時計を見ては、陸の目に映る光景を想像する。早く夜になれと、そう願って。


「ありがとうございましたー」

 今日のバイトは昼間から。ゴールデンウィークのような長期休暇は、従業員の主婦達がこぞって休む為、人手の足らぬ店は常に忙しかった。でも、そのお陰で助かった。忙しなく過ごす時間は、ただ待ちぼうけの時間よりも圧倒的に早く進む。退勤する時にはもう、夕方四時をまわっていた。

 そわそわする気持ちと共に家へは帰れず、川沿いコースの途中で土手の段差に腰を下ろす。日の出運動公園から私達が住む街までは電車で三十分ほど。陸からメールがくるまでここで待っていよう。そう決めた。

 優しい川風に、思いを馳せる。

 私の一番の不安要素は『私が知らない世界』だ。私のいない場所で、陸の世界が広がっていくのが怖い。知らない友人、知らない予定、知らない出来事。それはふたりでいる時に現れる超絶美人よりも、遥かに脅威である。
 高校に入学してからまだ一ヶ月。こんなことでは心臓がもたない。