「……は……?」

赤ん坊だった。

子供の知識がないため、何歳なのかはわからない。

華奢な花蓮の肩よりさらに小さく、すっぽりと腕に治まっている。抱っこ紐に大人しく包まれ、小さな手は花蓮の袖を掴んでいた。

花蓮は子供に微笑み、何かを話しかけている。

「12カ月を超えていそうですね」

ぼうぜんとしていると、但馬が堅い声を出した。

「え……?」

(12、カ月?)

意味が分からない。

「一歳を超えていそうだと言ったんです。首が据わってキョロキョロしているでしょう。おもちゃをしっかり掴んでいますし……」

「詳しいんだな……」

「普段は仕事で時間を忙殺されておりますが、できるときはちゃんと育児もしておりますからね」

但馬は妻帯者だ。
子供が産まれたときは、花蓮とプレゼントを選びに行ったこともある。その時、何れは自分もと希望を抱いたのが懐かしい。

「花蓮の子供……?」

姿を消したとき、すでに妊娠していた?
交際期間が重なっていたということか。

「う、嘘だろ? だって、お腹が大きくなればわかるだろ」

「花蓮さんほど細ければ、臨月でも服装で隠れる場合もありますよ。月に数回の、手しか繋がない逢い引きで何がわかるっていうんですか」

もっと会って距離を縮めた方が良いのではと何度か助言をしていた但馬は、そらみたことかと、目を据わらせる。

はっと乾いた笑いがでた。
まったく気がつかなかった自分に呆れる。

次に苛立ちが込み上げて、隠れて姿を見るだけと決めていたのに気がつけば彼女に向かって歩き出した。