「墨田さん、あの…新商品の企画書を作ってみたんですけど…」

茉白は墨田にマニキュアの新商品の企画書を見せた。
茉白のアイデアスケッチも付いている。

「………」

墨田は渡された企画書をよく読まずにテーブルに置くと、溜息を()いた。

「…真嶋さん、あなたは企画書なんて作らなくていいです。こちらの指示したことをやってください。」

「少しだけでも、説明を聞いていただけませんか?この商品はフタがグラデーションになっていて—」

「こんな絵じゃ何もわからないです。」

「すみません、絵が下手で…なので説明を記入してあるのと、口頭で説明を—」

「いらないって言ってるでしょう?あなたはコスメの素人なんだから。この話は終わり。今日はチークのパッケージの色を選んでください。」
墨田は強い口調で言った。

「…わかりました」


(素人…たしかにそうだけど…じゃあ私がここにいる意味って?)


———はぁっ…

茉白は一人になると大きな溜息を()いた。

(なんか最近全然…楽しくないかも。)


——— もし、困ったことがあったら—その時は、真夜中でも早朝でも、俺に連絡しろ


シャルドンのエレベーターで遙斗に言われた言葉が()ぎるが、茉白は首を横に振る。

(困ってるわけじゃないし…)

困っていたとしても自分の相談すべき相手は影沼だ、と自分に言い聞かせた。