〜赤城side〜

昨日の夕方に緊急搬送されてきた倉田禅(クラタ ゼン)くん。

産まれる前から見つけていた心疾患。何度か治療はしていたみたいだけど、ついに設備が追いつかなくなったらしく隣県から搬送されてきた。

いつ急変してもおかしくないので24時体制で1秒たりとも目が離せない。


先輩と交代しながら禅くんを見ていた。

しかし、事態は急激に悪化した。



午前4時50分。


モニターがけたたましく鳴り響き、呼吸と心拍が同時に止まった。


「呼吸、心拍ともに止まりました!」


他のベビーもいるので、スタッフに聞こえる最小限の声を出した。


先輩「心マ変わるよ。アドレナリン入れて、挿管用意して。

禅くんがんばれ!もう少し踏ん張って!」


看護師「アドレナリン入れました。

挿管セットです。」


先輩「ありがとう。赤城先生、俺今手離せないから挿管して。」


「わかりました。」


新生児の挿管はやったことがない。成人にやるより遥かに難しい挿管に手が震える。

いざ入れようとしても全く入っていかない。

どうしよう。どうしよう。どうしよう。

先輩は薬量を管理しながら心マしているから、僕しか挿管する人はいない。