「男性に可愛いなんて言うものじゃない」
 頬を赤くしながらフィオンが声のトーンを落として睨みつけてくる。今日は初めてのフィオンがたくさん見れて嬉しい。
 人間の姿になって、ここへ来て本当に良かった。
「友だちや仲間は心配しないのか」
 フィオンが咳払いをして話を元に戻すと、それまで隠れていたバイオレットが飛び出してきた。
「そうだそうだ! もっと言ってやれ!」
「ちょっと! バイオレットは私の味方じゃなかったの?」
 突然出てきたバイオレットの名前にフィオンが怪訝そうにする。
「もしかして、友だちもいるのか?」
「そうなの。バイオレットが心配だからってついてきてくれたの」
 どこにいるんだとキョロキョロするフィオン。
 ここにいるよーとフィオンの目の前で手を振るバイオレット。
 やっぱり妖精の姿は見えないようだ。
「フィオンの目の前にいるよ」
 そう教えてあげると、フィオンが残念そうな顔をした。
「もう俺には見えないんだな」
 私も認識されなくて悲しかったけれど、フィオンも妖精が見えなくて寂しいのだなと、彼の気持ちが知れてよかった。