硬く閉じていた瞼をおそるおそる開く。
 あたりは綺麗に整頓された棚にテーブルと椅子のある、こぢんまりとした部屋だった。
 先に来ていたトンボの羽の妖精が、大きな妖精の手の上に小さいカゴを乗せていた。
 大きな妖精の大きさはフィオンくらい。けれど、その長い髪と瞳は、月の光のように淡くクリーム色に輝いていて強い魔力を感じさせた。耳は私たちのように尖っていて、サラサラとした光沢のある服を着ている。そして顔だちが美しい。とにかく美しくて、顔を見て思わず息を呑んだほどだった。
 妖精族には美人が多いけれど、美人の域を超えている。
 隣でバイオレットも「うわっめっちゃ美人」と小声で呟いていた。
「あれ、珍しいお客さん」
 その低い声で、初めて月の妖精が男性だと知る。
 トンボの羽の妖精が「月の妖精にお願いがあるんだって」と紹介してくれた。
「エキザカムの妖精がぼくになんの用事?」
「私、メリンと言います。月の妖精が強い魔力を持っていると聞いて来ました。私はできたら人間の姿になりたいんです。それがダメなら、ある人間に私の姿が見えるようになる魔法をかけてほしいんです。お願いできますか」
 緊張しながら、ここまで来た理由を話した。どうか、私の願いが叶いますように。握りしめた両手は汗でびっしょりだった。