いちおう、年頃の娘というやつなんだから、もう少し気を遣っていた方が良かったかもしれない。
大学教授の妻となれば身だしなみやファッションにもしっかりしていた方がいいだろうし……。

聡一朗さん、ダサくてつまらない女って私にがっかりしたかな……。

と、気まずく思っていると、聡一朗さんは穏やかに表情をやわらげた。

「そういうところが君の魅力だと思うよ。やはり君を選んでよかった」

私がほっとしていると、聡一朗さんは「だが」と続けた。

「俺の妻となってもらって以上、金銭的な配慮は一切かけさせるつもりはないからね。お金は君の好きなように使ってもらって構わない」

聡一朗さんはカードを差し出した。
クレジットカードだ。

「え、そんな」
「生活が変わってなにかと物入りになってくるだろう? これを使って必要な物をそろえてくれ」

 一緒に買い物に付き合う時間は取れないので、共同生活に必要な物もそろえて欲しい、と言われたので、私は素直に受け取ることにした。

「ありがとうございます」

タクシー代の時と同様、また深々と頭を下げてしまった私を残して、聡一朗さんは出て行ってしまった。