五分ぐらいかけてやっと聡一朗さんの部屋にたどり着くと、聡一朗さんは「待っていたよ」と優しく迎え入れてくれた。

「迎えに行けなくてすまなかったね。やっと今オンライン会議が終わったところでね」
「いえ。タクシー代ありがとうございました」

私がぺこりと頭を下げると、聡一朗さんは器用に片眉を上げて言った。

「もうお礼を言う必要なんてないだろう? 妻の交通費を出し渋る夫になんて、俺はなるつもりはないからね」

あ、と顔が赤くなる私を連れて、聡一朗さんが部屋の中を案内してくれた。

まずはリビングから見渡す最上階からの眺めに圧倒されてしまう。

足元に広がるビル群は、夜になったどれほど綺麗な夜景を見せてくれるのだろう。
日中の今は空が解放感を与えてくれて、特に天気の良い今日は青空がとても気持ちいい。

「すごい! なんだか空を飛んでいるみたいですね」

 つい子供っぽくはしゃいでしまうと、聡一朗さんは表情をやわらげた。

「高いところが苦手じゃなくてよかったよ。さぁ、他の部屋も案内しよう」

いずれも広くて綺麗なダイニング、キッチン、ランドリーと案内してくれた後、最後に見せてくれたのが他の客室よりひときわ広い部屋だった。

「ここが君の部屋だよ」

リビングと同様に、眺めがすごくよいところだった。