気が引けたけれども、何通か手紙を読ませてもらった。

 そこには、聡一朗さんの留学先の様子や、嬉しかったこと楽しかったこと、悔しかったこと腹が立ったこと、努力に明け暮れ、充実している日々のことがつづられていた。

 聡一朗さんの喜怒哀楽のすべてが、詰まっていた。

 離れた地で孤独に暮らすお姉さんには、その一文一文が大切な聡一朗さんとの繋がりを感じさせるものだったのだろう。

 辛い日々を乗り切るための糧そのものだったに違いない。

「この手紙は、聡一朗さんとお姉さんの絆の証だったんですね」

 聡一朗さんは、押し黙り続けていた。
 なにも言葉を紡げないようだった。

 涙を堪えるのに必死で。