暗い部屋の中、スマホ画面だけが灯っていた。

 椅子すら置いていない部屋の床に座り込んで、私は茫然とそれを見つめていた。

 あたりに置いてある文具や雑貨の箱から考えると、ここは倉庫らしかった。
 まんまと紗英子さんに騙されて、閉じ込められてしまったのだ。

 窓もない。
 扉の前で大声を出しても、埒が明かない。

 幸いスマホの電波が生きていたので、鍵を開けてもらおうと大学事務に電話してみた。
 けれども、ここがなんという倉庫なのかが分からなかった。
 職員の人はすぐに動いてくれたから、ここから出られるのは間違いないだろうけど、この広い大学内の倉庫をしらみつぶしにあたるとなると、時間はかかる。

 授賞式には、当然間に合わない。