これほど怒りに駆られたのは――感情的になったのは、いつぶりだろう。

 美良と出逢う前の俺なら、恩師に迷惑を掛けるような真似はけしてしないし、女性に声を荒げたりもしなかっただろう。

 俺は美良のこととなると、こうまで我を失い感情的になってしまうのか……。

 まるで、姉を失う以前の自分を取り戻したかのように。

 俺にとって美良は、それほどまでに大切な存在なのだ。

 彼女に見守ってもらえず受ける受賞など、なんの価値もない。
 大勢の人間に迷惑を掛けようが、彼女以上に優先するものなどない。

 美良がいなければ、俺はもう、生きていくことはできないんだ。