「差し出がましいようですが、あの子は若すぎて先生に相応しいとはとうてい思えません。先生は私の父も大変な期待を寄せている方。日本を代表して世界と渡り合う方なのですよ。そのためには配偶者からのサポートも大いに必要になってくるというのに、あの子にそれが担えるとは、私とても思えませんわ」

 何度か聞かされた美良への批判だ。

 いつもは聞き流していたが、今は腹立たしく思う。
 今言う話ではないし、彼女を選んだのは俺だ。
 赤の他人がどうこう言う筋合いはない。

「すまない。俺の都合で遅れると伝えてくれないか」

 紗英子君を無視して、俺は立ち上がって係員に詫びた。

「お待ちください、先生」

 しかし立ち塞がるように紗英子君が寄って来る。