まぁ、高一、高二の時はここまで来るのは結構大変っていうか面倒くさかったのだけど……。どっちにしろ私はお弁当率高めだったから、そこまで苦労はしていない。
教室を出て左手に曲がり、食堂に向かう途中。杏月が急に「あっ……!!」と大きな声を上げたからびっくりしてしまった。
「…っ!ど、どうしたの?」
だけど、私が驚いたように彼女も何だか驚いているようだった。杏月の人差し指が、ある一点を指していて、そこに視線を辿っていくと────。
「うげ、……」
「はわわぁ…♡」
正反対の声を出した私と杏月。
はわわぁ…って、アニメじゃないんだから。
沢山……、というより無数の女の子たちが群がるその中心に、一際輝く明るいミルクティー色の猫っ毛が見えた。
目を凝らしてじーっと見つめれば、それが誰かなんて遠目でもすぐに分かってしまう。けど、数日前の私ならそれが誰かなんて検討もつかなかった相手。
見事に私と杏月の反応が正反対で、「はぁー?」と呆れてしまう。
「ゆいっ!あれだよ、私がずっと話してた人!犬飼瑛人樣♡」
「う、うん…」