広々とした100平米を超える部屋に戻ったあと、
亮二は、理緒がジャグジーに入るのを楽しみにしていた。

「お先にどうぞ」と亮二は、理緒に
先に風呂に入るよう促す。

「あ、では、お言葉に甘えて…」

理緒は、そっとバスルームに入っていった。
亮二は「きっと驚くぞ」とほくそ笑んでいた。
案の定、亮二の予想通りの展開が待っていた。

「きゃーーーーー」

理緒の悲鳴が聞こえてきて、
亮二はクスクス笑った。

ジャグジーのドアから
長いバスタオルを巻いた
理緒が出てきた。

「亮二さん…あれ、
亮二さんが用意したの!?」

「いや、食事中、
ホテルの人に頼んだんだよ」

「ホテルの人…」

ジャグジーを、赤やピンクや白のバラで
びっしり埋め尽くすよう亮二がホテルスタッフに頼んでおいたのだ。

それは、それは、美しいフラワーバスだった。
きっと理緒が喜ぶと思ったのだ。

そして、理緒の雰囲気にも
ピッタリだと思った。

「…これ、高かったですか…?」

「あは、バラだからね
でも、値段は気にしないで」

「……あ、ありがとうございます…
どうしよう、お風呂に入るのが
もったいないです…」

「気にせず夜景と
バラに包まれながら
ジャグジーを楽しんで」

「あ、あの、ジャグジーの
お写真撮ってもいいですか?」

「どうぞどうぞ」

理緒は、バッグから、スマホを
取り出し、バラ風呂ジャグジーを
一生懸命、撮影している。
そういうところは、今の女の子と変わらない。
理緒は、写真を撮り終わって、自分が
バスタオル一枚で部屋をうろうろしてたことに気がついて、今度は赤面した。

その様子を見た亮二は、大爆笑した。

「あの、ありがとうございます…」

そう言って、理緒はジャグジーに向かった。

こんな普通のことが
理緒には尊かった。

普通ではないかもしれないが
亮二には、ちょっと贅沢な
サプライのつもりだった。