2人にバレないよう「ふぅ」と、安堵のため息を漏らすと「じゃあ、私はコーヒーをお願いします」と伝えてくれた美優。
さっきまでの固い表情は、もう消えていた。


「うん、お安い御用だ。買ってくるから待ってて」

「ありがとうございます」


車を降りてコンビニへ入ると、美優のコーヒーと妃織ちゃんご希望のりんごジュースを購入。

妃織ちゃんの好きそうなお菓子も買って行こうかと思い立ち、俺はお菓子コーナーを眺める。スティックキャンディとネックレス付きのチョコレート菓子を手に持ってレジに並んでいると、妃織ちゃんの喜んだ表情が思い浮かんで自然と笑みがこぼれた。

会計を済ませて車に戻り、お菓子の入った袋を妃織ちゃんに渡すと、思った通り大喜び。
ご機嫌な妃織ちゃんを乗せて、水族館までの道のりを進んだ。


「さて、着いたよ」


車をパーキングに駐車させると、美優が妃織ちゃんのチャイルドシートのロックを解除した。それと同時にぴょんと飛び跳ねるようにして席を立った妃織ちゃんは「すいぞくかんだー!!」と、窓に張り付いている。

よっぽど楽しみにしてくれていたんだろうな。


「ママ! はやくいこ!! イルカさんにげちゃう」

「待って妃織、イルカさんは逃げないって……」


俺が後部座席に回るまでにドアを開けて外へ出て行ってしまう妃織ちゃん。