まぁ、それもそうか。半ば強引に水族館へデートへ連れ出した挙句、俺にあんな風に強い口調で言われてしまったのでは美優も戸惑うに決まっている。
純粋な子どもなら素直に受け取れるかもしれないが、大人はそう一筋縄にはいかないか。それに美優は、男性に対して不信感を抱きつつ今まで生きてきたはずだから。

少し無神経だったかもしれない。


「美優、無理強いさせてごめん。俺は医者だけど、気を遣わなくていい。何度も言っているが、俺がしたくてしていることだから」

「でも……なんだか申し訳なくて。ごめんなさい」

「美優はなにも悪いことしてない。でも、今日は『医者と患者』という関係じゃなくて『彼氏と彼女』みたいな関係だと思って欲しい」

「えぇっ!?」


驚いた様子の美優だったけれど、少しだけ頬がピンク色に染まったことを俺は見逃さなかった。

そうだ。今日は『医者と患者』などのような分厚い壁は、今日はまったく必要ない。俺は、素の美優を知りたいんだ。


「それで、なに飲みたい?」

「ひおは、りんごジュース!!」


話を聞いていた妃織ちゃんが、美優より先に元気よく応えてくれた。驚いた様子の美優だったけれど、すぐに優しい眼差しへと変わり、妃織ちゃんの頭を撫でる。

やっと、いつもの美優に戻ってくれた……。