そんな山内先生の話に淡い期待を抱きながら「わかりました」と応えた。

ちょうどその時、先ほどの看護師さんが病室を訪れ「そろそろ手術の時間なので」と声を掛けてくれる。いつの間にかオペ出しの時間を迎えていたようで、私は妃織を抱きかかえて山内先生と看護師んさんたちと一緒に病室を出た。

エレベーターに乗り込み、2階にある手術室へと向かう。


「どこいくの? まほうは?」


場所を移動するとは思っていなかったようで、私の肩につかまりながら妃織は山内先生に質問をしている。


「魔法はね、違うお部屋でするんだよ。先生と妃織ちゃんだけの秘密だから、ほかの人に見られないようにしないといけない」

「ひみつかぁ。 ママにも?」

「もちろん。ママにも秘密」

「ふーん。ママ、ひみつだって!」


2階の廊下を歩きながら妃織の頭に手を置くと、にこにこした笑顔で妃織との会話を楽しんでいる山内先生。

毎回毎回、山内先生の言葉には驚かされる。まるで絵本を読み聞かせているかのような山内先生の発言は、妃織のような小さい子どもたちでも納得のいくような説明のしかただ。

大人の私ですら「こんな言い方があるのか」と、感激してしまう程に例え方が上手い。
これだと、子どもたちも怖がらずに手術を受け入れてくれるだろう。


「それでは、お母さんはこちらでお待ちください」