外来にいたときとは打って変わって、少し厳しめの口調でそう言った山内先生。そうかと思えばすぐに優しい顔へと表情を変え、妃織の目線に合わせてしゃがんだ。


「妃織ちゃん、必ず先生がよくするからね」

「ひおのいたいとこ、なおる?」

「もちろん! 先生が、妃織ちゃんの足に魔法をかけるよ」

「えっ、まほう!? せんせい、すごーい!!」


ぱっと表情が明るくなり、瞳をキラキラさせながら妃織は山内先生に飛びついた。妃織のことを抱き止め「いい子だ」と言いながら、山内先生は頭を撫でてくれている。

魔法……か。そんな風に考えたことなかったかも。
『手術』と聞けばどうも重苦しい方にしか思考が回らず、あまりいいイメージはなかった。

だけど『妃織の足の痛みを取ってくれる魔法』だと捉えれば、そんなに悪くないかもしれない。さすが、毎日たくさんの患者の対応をしているだけあって、考え方が柔軟だ。


「だから、お母さんもあまり深く考えないように」


妃織のことを抱きかかえたまま、山内先生は私の方へと話を振ってくる。

もしかして『魔法』と言ってくれたのは妃織のためでもあるけれど、私のためでもある?
私があまりにも不安だから、緊張を和らげてくれたのかも。