そんなことをやっているうちに病棟の看護師さんに声を掛けられ、いよいよ入院。両親とはここで別れ、妃織を抱きかかえて看護師さんと一緒に病棟へ上がった。

今はご機嫌で「じぃじ、ばぁば、バイバイ!」と手を振っていた妃織だけれど、この先どうなるか心配で仕方がない。
今回は小児ということもあって特別に私が入院に付き添うことになってはいるけれど、きっと入院期間が長引くにつれ飽きるだろうしストレスも溜まっていくに決まっている。

私の働くカフェにも連絡をして長期休暇の申請をしたものの、いつまでも空白にしているわけにもいかない。「気にしないで、妃織ちゃんの傍にいてあげて」と、店長は言ってくれたけれど、仕事に行かなければ収入にもならない。

妃織のこと、仕事のこと。考えなければいけないことがたくさんあって、色々な思考が頭の中でぐるぐると渦巻いていた。


「不安ですか?」

「えっ、あ……まぁ、そうですね」


不安が顔に出てしまっていたのか、看護師さんが声を掛けてくれる。

いろいろなことが不安だけれど、それを悟られないように妃織の荷物を片付けた。


「大丈夫ですよ。山内先生は整形外科でもとても優秀な先生だし、傷跡も残らないって、ほかの患者さんもよく言っていますから」

「そう……ですか」


そういった内容の心配事ではなかったけれど看護師さんが優しく声を掛けてくれたので、作り笑顔で適当に返事をしてしまった。