看護師さんから予約票を渋々受け取ると「ありがとうございました」と小さく呟いて診察室を出る。待合室では両親が待っていてくれ、妃織は両親が買ってくれたのであろう、紙パックのオレンジジュースを大人しく飲んでいた。


「美優。あんた、声うるさかったわよ」

「待合室まで聞こえてたぞ」


声を揃えて、そう言う父と母。普段は家で小さいことで言い合いをしているクセに、なぜかこういうときだけ意見がリンクしている。
まぁ、夫婦なんだし当たり前なんだろうけど。


「わかってるよ。でも、本当に痛いの」


山内先生も言っていたけれど、かなり広範囲での傷だ。当然自宅での自己処置は難しく、こうして通院による経過観察ともに処置が必要なくらいだ。

妃織の骨折に比べたら全然マシなんだけれど、痛いものは痛い。そもそも、大人だから痛くないとかないからね。


「まぁいいわ。通院、付き添いが必要なら私が行くからね」

「い、いいよ。1人で来れるから大丈夫」


付き添いに行こうかと言った母を、なんとか振り切る。
今後も処置は必要だろうし、多分また次回も叫ぶ。その度に母から「うるさい」と言われても困るし、通院は私1人で充分だ。

そもそも、今回は妃織の手術のICに来てもらっただけだから。