宇田先生は、長身でとても美人だった。立ち振る舞いも綺麗で、さすが『医院長の娘』といった感じ。

もちろん晃洋さんとも対等に話が出来ていたし、女性として言うことなしだと思う。
あんな素敵な人に、私なんて太刀打ちできない。

ごちゃごちゃそんなことを考えていると、玄関で物音が聞こえた。
ふと顔を上げて時計を見ると、時刻は22時を少し回ったところ。晃洋さんが、帰って来たようだ。


「美優、ただいま。起きてる?」


テーブルに突っ伏していたからお出迎えには間に合わず、晃洋さんがリビングへと入って来た。


「あ……お帰りなさい。ごめんなさい、今ご飯の支度しますから」

「……待って」


キッチンへ行こうとした私の腕を、晃洋さんが掴んだ。

嫌だ。泣きそうになっていたことは、バレたくない。
だってもし今日のことを問い詰められたら……すべてを話さなければいけなくなる。

宇田先生に言われたことも、私が晃洋さんにはふさわしくないのではないのかということも。
もう思い出したくなんてないのに。


「なにかあった?」


その勘の鋭さは晃洋さんが医者だからなのか、それとも私を1番近くで見ているからなのか。


「いえ……なにもないです」

「じゃあ、なんで顔合わせないの?」

「別に、そういうわけじゃ……」