「ずいぶん偉そうな口ぶりねぇ。でも、そうやって調子に乗っていられるのも今のうちだけよ」


再びギロリと私と妃織のことを睨むと、宇田先生はその場を去って行ってしまった。
全身の力が抜けて、そのままヘナヘナと座り込んでしまう。


「大丈夫ですか!?」


妃織を抱きかかえたままへたり込む私を心配した売店の女性店員さんが、駆け寄って来てくれた。

そうだ……まだ、ここは院内だ。
ほかの患者さんもいたのに、こんな公の場で名の知れたドクターと言い合いをしていたなんて宇田医院長の耳にでも入れば、ますます晃洋さんと引き離されてしまうかもしれないのに。


「……ごめんなさい。大丈夫です」

「顔が真っ青よ。待合まで一緒に行くから、そこでしばらく休んでいた方がいいかもしれない。子どももいるし、少し落ち着いてから帰った方が安心よ」

「すみません……ありがとうございます」


腰に手を当てて私の身体を支えながら、店員さんは私と妃織を待合室まで連れて行ってくれた。その店員さんとの優しさと、さっき宇田先生に言われたひどい言葉たちが頭をぐるぐると回っていて、涙がごぼれてくる。

待合室の椅子に座らせてくれた店員さんは「内科の先生を呼んで来るから」と言い残し、その場を離れて行ってしまった。