なんとなく嫌な予感がした私は妃織を抱きかかえた。

女医さんは私との距離をグッと縮めると、まるで見下しているかのように私と妃織を見てくる。身長が私よりも高いこともあるからなのか、すごい威圧感だ。


「あ、あの。なにかご用でしょうか?」

「ふっ、単刀直入に言わせていただくと。あなたは山内先生にふさわしくないわ」

「はい?」


今日初めて会ったというのに、いきなりとんでもないことを言われて驚く。それに、私が晃洋さんにふさわしくないかなんてことは、彼女が決めることではない。

ちゃんと名乗ってもいないクセにそんな失礼なことを言ってくるなんて、失礼極まりない。


「私、山内先生とアメリカに行かせていただくの。お父様が、彼と一緒に行くことを許してくださって」


お父様? もしかして、この女医さん……。

ふと彼女の左胸に目線を向けると、名札には『宇田』と表記されていた。

やっぱりそうだ。
彼女は、この宇田総合病院の医院長の娘なんだ。

だから、整形外科医であるお父様を利用して晃洋さんとのアメリカ行きを推したのだろう。それに加えて、宇田医院長は彼女と晃洋さんの結婚を見据えているとような気がする。

そうでなければ、初対面である私に向かって「ふさわしくない」なんて言わないはずだ。