お陰で少し眠れた。
 明け方にもう一度氷嚢の氷を替えて、眠り続けるパピーの頬を撫でた。


 それから手早く身支度をして。
 パピーが目を覚ます前に、フィリップスさんがパピーに着せてくれていたコートを手にして部屋を出た。


 気が急いていた。
 先ずはノックスヒルに電話を入れて、モニカのことを知らせなくては。
 その後、コートをクリーニングに出して。
 馴染みのその店は丁寧なのに、安くて早い。
 それから角の食料品店へオートミールとミルクを買いに行って、目覚めたパピーに蜂蜜を入れた甘いポリッジを作ってあげよう、と思った。


 土曜日の朝早くは、いつもより人通りは少なくて静かだ。
 白いとんがり屋根の電話ボックスに入って、受話器を上げて交換手にクレイトン領のノックスヒルと告げた。

 ノックスヒルとは領地を見下ろす小高い丘の名前で、伯爵家のカントリーハウス以外に建物はないので、ノックスヒルと言えばウチを指した。