「オルもそうなんですよ。
 本当に肝が据わっている、と褒められていました」


 いや、あれは褒めたんじゃありませんよ、と。  
 どこかでフィリップスさんの声がする。



「アレはね、どちらかと言うと、ふてぶてしい」


 師匠もフィリップスさんと同意見のようだ。
 そう言って、馬車に向けて、顎をしゃくった。
 早く乗れ、と言いたいらしい。
 私は残ったサイモン達を振り返らずに、乗り込んだ。



 私と、ぐったりした様子で座席に転がされたモニカを乗せて。
 馬車は走り出した。


「モニカは名前を答えたから、貴方の術に掛かってしまったんですね?」

「まぁね、この子は君達のなかで、一番精神的に弱いのが分かったから、掛けやすかったですね」


 眠らされたモニカを膝枕する私を、冷めた目でスピネル・ヴィオンは眺めていた。



「……どこまで行くんですか?」

 師匠は少しは考えている振りをしている。


「何処がいいですか。
 あまり遠くまでは行きたくないんですよ。
 これから予定が詰まっているし」

 とても楽しそうに、でも目は笑わずに。
 スピネル・ヴィオンは続けた。