馬車の方を振り返ると、モニカを乗せ終わった師匠がこちらを見ていた。
 もうこれ以上、彼の馬車に乗せる人数は増やさない。



「キャンベル、俺も行ったら駄目か?」

「モニカのこと、お願いします。
 貴女も絶対に帰ってきてください」

「ジェリー、貴女も一緒に行かないといけないの?」

「ジェンお姉ちゃん、直ぐに帰れる?」


 皆がそれぞれ心配して声をかけてくれる。
 全員にきちんと返事をしたいけれど、そんな時間はない。
 師匠が私を待っている。

 私は最後に言葉をかけてくれた、最後まで口を挟まない賢いクララに笑いかけた。


「帰ったらモニカも一緒に、皆でケーキを食べようよ。
 お兄ちゃんの誕生日をお祖父様にも、教えてあげて?
 私達だけでお祝いしたら、ひとりにしないで、ってお祖父様は泣くよ」


 大丈夫、絶対に帰る。
 だって私は、これから……




「皆さんはムーアの邸へ帰るんですか?」

 ひとりで馬車の方へ歩いてきた私に、ヴィオン師匠がにっこり笑った。


「従姉を見捨てて、逃げるかと思ったのに、君は肝が据わっていますね」