「え?」

「貴方の顔を見ながら、戻るから。
 その顔が好きだから、そこは譲れない。
 ……本当に泣き虫ね、黒子触っていい?」


 私が爪先立ちをしなくていいように、オルが屈んでくれた。

 オルの右目目尻に小さな黒子がある。
 私は震える左手の人差し指で、その黒子に触れた。


「どうぞ、好きなだけ……
 因みに言っとくけど、泣いてないから」


 シアと初めて会ったドレッシングルームで私達は向き合っていた。




「私の時戻しに使ったら、また魔力足りなくなるんじゃないの?
 ちゃんと時送りは出来る?」

「御心配なく……披露は出来なかったけど、魔法の才能は結構あるの、俺は。
 こう見えても、次代の女王陛下の魔法士なので」


 次代の女王陛下の、と言うことは。
 イヴリン王太女殿下の専属!



「じゃあ時間的に余裕があるなら、13のオルに会いに行って」

「どうして?」

「私のことを教えて。
 絶対に好きになるように、刷り込んで」

「いやぁ、そんな怖い賭けは出来ないな。
 自分と顔合わすなんて、そんなの」

「文献には載っていなくて、安全性の確証が持てない?」