「たぶん、“吸血鬼”じゃなくて“朔先輩”として見てたからかな…」



むかつくことも多いけど…ちょっぴり本音を言うと、私のなかでは特別な人になっている……のかもしれない。



むかつくけど。むかつくけど。


いっつも余裕そうだし、からかってくるし。



だけど、恐怖でしかなかった“吸血鬼”という存在に、光を与えてくれた人。安心できた人。



私にとっては……だけど。



ーー先輩は、ちがうでしょ?



甘い血をくれる人なら、誰でもいいくせに。



最近、私はおかしい。




『ーー小夜ちゃん』



そんなに優しく名前を呼ばないでくださいよ。




無気力、マイペース、……女たらしめ。





この時、先輩がこの会話を聞いていたなんて、私は知らなかった。