「……ほら、私だけじゃないって」


「……はあ…」



私は先輩にとって、ただの血を提供してくれる後輩。


それでいい。それ以外の何者でもないのに。



ーーじっとその光景を見つめていると、朔先輩とぱちっと目が合った気がした。



……っ、気のせい。



そのとき、急に愛莉ちゃんの雰囲気が真剣になって。



「……でもさ、小夜だって先輩は平気なんでしょ?吸血鬼なのに」


「……うん、なぜか」



なんでだろう、先輩は怖くないの。



「……トラウマ、消えてない?…ってこんなこと聞いちゃだめだよね、ごめん」


「ううん。……トラウマはね、まだ残ってる」



……はず、なのに。何で、先輩は平気なんだろう。