ただ、これだけは言いたかった。


「全部を壊してくれてありがとう。
大人達から救ってくれて、本当にありがとう」



目を見開いた深門は、何度か瞬いたのち、ゆっくりと笑みを浮かべた。


綺麗な泣き顔に、幼子のような笑みを見せて。


「ルイのためにしたことが許されるなら、それこそが僕にとっての救いだよ。
……こちらこそ、ありがとう。酷いことをしてごめん」


そう言い残して、ふらりと立ち上がった深門は、一人バルコニーから姿を消した。



心臓が痛い。胸が苦しい。


せめてどうか、今後のあの人が本当の意味で幸せになれますように。


そう願って後ろ姿を見送った。



「良かったのか?」


「……うん。あの人には私しかいないと思わせたらいけないから」


だから、追わない。



ところで、どうして彼らがここにいるのだろう。


瑠架と利央を見て、小さく首を傾げる。



「瑠架のやつ、間宮ちゃんなら壁の花になっててもおかしくないのに、どこにもいないからって心配してたんだよ」


気付いた利央が説明してくれた。


壁の花……。


本当にそう思っていたらすこし可笑しな話だ。