「皆様。今宵はお忙しい中、お集まり頂きまして誠に有難うございます。
今日ここに舞踏祭を開催することが出来たのは、我が校の生徒達、先生方の助けがあってこそです。
年に一度の舞踏祭。羽を伸ばしてどうぞ楽しんでいらしてください」
来校者に向けたであろう短い祝辞を並べたて、早々に次の段階へと移る。
外部からのお偉方の紹介が一人一人と始められる。
これが見せ場なのだから当然の流れではあるのだろう。
舞踏祭が始まって早々に、瑠架はお偉方の挨拶回りに忙しそうだ。
私はというと、隅の方で絡まれないようグラスに注がれたドリンクを1人飲んでいた。
「椿ちゃん」
不意に呼ばれて顔を上げると、そこにいたのは深門だった。
流石、仮面越しでも分かる美形だ。
「こんなところでどうしたの?」
「別に」
「僕もちょうど飲むところなんだ。乾杯しない?」
「いいけど、一度外に出ない?」
周囲の視線を感じて、一緒にいるのはまずいと思い提案する。