「そんな顔をするな。めかしているんだ。
今日ばかりは気張りしない方がいい」


つまり、気楽に行けと言いたいのだろう。


事もなげに言ってのけた、隣に立つ男を上目に睨み付ける。



「…これで顔色なんて、どうせ分からないくせに」


ほんの少し傾いた目元の物を正しながら、そっぽを向く。


そんな私を見兼ねてか、仮面越しでも隠しきれない美顔で覗き込んでくる。



「すまない。俺の誘いは強引だったか?」


縮こまり、明らかに顔色を伺う素振りを見せられては、何も言えるわけがない。


喉元まで出掛かった、苛立ちを孕んだ抗議の言葉は飲み込んだ。



「…別に。貴方の所為とは言ってないから。
私が勝手にイライラしているだけ」



双方、口を開けずにいると会場前方の大舞台にスポットライトが照らされた。


立っているのは今日の司会であろう、この学園の理事長。