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季節は冬。
雪の降る日にマスカレードは執り行われた。
仄かに光の灯るシャンデリア。
極限まで磨かれ、人の顔さえ映り込む大理石に反射し煌めいている。
立食式の長テーブルには豪華な食事が並べられ、オイルランプが辺りを神秘的に照らし出す。
その光景を見て、入り口で一瞬足が止まるも構わず歩き出す。
深い群青一色の膝丈ドレスが、踏み出すたびにふわりと揺れた。
上に羽織った白いボレロが直に肌に触れてこそばゆい。
選んだ中ではこれが一番控えめなドレスだ。
ショートラインのドレスも魅力的だったけれど、自分に合わない事は承知しているため、手に取った時点で諦めた。
催し当日の今日、どれだけ憂鬱な気分で服装チェックを行ったのか、考えるだけで頭が痛い。
俯いてため息を吐くと、耳に揺れるドレスと同色のイヤリングが目端で光る。
ああ、まったく嫌になる。