なのに、何度時を繰り返そうとも、彼女が想うのはただ一人。
自分は今世でも、きっとあの男に負けてしまう。
けれどもそんな危機的状況を感じつつ、焦りは微塵も湧いてこない。
結末はいつも残酷に、悪い意味で彼に味方をしてきたからだろう。
運命は、結果として愛し合う二人を遠ざけ引き離す。
その点のみ取れば、自分は救われてきたと言えようか。
二人の仲を、嫉妬と憎悪で狂いながら引き裂いてきた。
今回も、もしもそうであったなら……
自分は本当に、おかしくなってしまうかもしれない。
互いを求め、想い合うも結ばれず。
あの2人を取り巻く環境が悪過ぎた。
……と言ってしまえたら簡単だけれど、そう単純に物事は運ばないのだろう、きっと。
それぞれが死に別れ、別の次元を生き、それでも巡り合ったのはまぎれもない事実。
それがどれほど強い因果で近しい者たちを繋いできたのか、僕にも分からないわけがない。