【深門side】
「アルニス」と、彼女に前世の名を呼ばれて不覚にも狼狽してしまった。
あの子は、自分を覚えている。
否、思い出したと言うべきか。
転生するたび、彼女を思い出した。
あれはルイじゃない、別人だと思いこもうとすればするほどに、胸はいたく締め付けられた。
当然だ。
どう足掻こうとも、誰であろうと。
たとえ姿形は違えども。
それが、一心同体の同一人物に間違いないからだ。
自然と上がってしまう口角は、自力では止められない。
「は、はは……」
漏れ出た声はあまりにも掠れ、乾き、枯れていた。
ずっと、待ち望んだ覚醒に一歩と近付いた。
それは喜ばしいことのはずだというのに。
……どうして。
素直に喜べないのはなぜだろう。
…いや、分かっている。
その理由を自分は確かに、知っているはずだ。
彼女の歩む道のその先に、いつも、自分がいないからなのではないか……と。
野良のように汚らしい格好で人間に紛れて暮らしていた。
いつ死んでもおかしくない状態でルイに拾われ、愛をもらった男は、彼女を深く愛した。