*
いくつかある学園の一大行事の一つ、マスカレード。
またの名を『仮面舞踏会』
夏季休暇を終えて、生徒達が浮き足出すこの時期。
あまり気乗りしないまま、自分とは関係ない催しだと思っていた。
同時に、ヴァンパイアという存在が現実にいるのだと、再確認させられてかなり経った。
休みボケが目立っていた生徒も、テスト2週間前になるとパタリといなくなった。
そんな中――。
「お、間宮ちゃん。偶然」
教材片手に、廊下を一人歩いていると、利央に遭遇した。
あの一件以来、何かと絡むことが多くなった。
…とはいえ、あっちから声をかけてくるため到底無視できないという、ただそれだけ。
と、いうのは恐らく口実で……
個人的にはこの人の性格は嫌いじゃない。
それが、私が彼を避けない、正直な理由なのだけども。