「そう…」
知らず知らずのうちに瞼の奥が熱くなる。
涙がこぼれそうなのを、必死で堪える。
泣いてはいけない。
そう思った私の心情とは裏腹に、王子は言葉を続けた。
「だから、お前のことも知りたい」
「……え…?」
「気付いているだろうが、俺が焦がれているのはルイだ。だが、今世のお前について知っていることは何もない。だから、教えてくれ。お前という存在を、余すことなく」
今度こそ涙が頬を伝いこぼれ落ちた。
なんて律儀で、優しい人なんだろう。
「私……私、は……」
喉の奥がつっかえて、うまく声にならない。
「私は、間宮椿」
「そうか、椿。俺は宝生瑠架だ」
初めて言葉を交わしたような気分だ。
彼を知りたい。
今の彼を知って、丸ごと彼を愛したい。
そう、思ってしまったら止まらない。
信じてもいいのだろうか。
私は、彼を……。