触れた手は血色悪く、汗ばみ脈が小さくなっていた。


驚くほどに冷えている。



元々いつ死ぬかも知れない体。


ここまで保ったことが奇跡なほどだった。



「か、むい……」


かろうじて意識のある少女。


薄く唇を開き、震える声で呼んだのは愛する者の名だった。



焦点の合わない瞳にその姿、顔を焼き付けるよう必死に写そうとする彼女に、心が痛む。



絶望を狭間感じながらも、それを表に出さないよう青年は微笑んだ。


最期を残してもらうなら、笑顔の方がいい。


その一心で、引き裂かれそうな心を押し込め自分を保った。



「私、幸せ…ね。
たとえ何がなくなろう、と……貴方がいる、から…。
奪わせない。これだけは、絶対……に」


笑うことさえ、喋ることさえ。


辛いはずなのに。



それも自分のためだと思うと心臓が張り裂けそうで、どうにもやりきれない。


ただ、悔しい。