「ったく、だからあんだけ言っといたっつーのに」


ブツブツ呟きながらも、廊下の角を曲がり、男子寮の方へと姿を消したことを確認して安堵する。


何か、あったのだろうか。



それよりも、もう戻ったほうがいいのかもしれないと、そそくさと自室に戻ろうとした。


けれど。



カタンっ――。


今し方覗いていた部屋から、何かがぶつかるような物音がした。


様子だけでもと中を覗けば、機微ながらも人が倒れているのを目視できた。



言うまでもなくそれは宝生瑠架。


「はぁ、はっ……はあ…」



荒い呼吸が幾度となく繰り返され、放っておいていいのか分からなくなる。


私はどうしたらいいのだろう。


いつものように自分には関係がないと捨ておけば良いのだろうか。



迷っていると、痛めた手を不意にぶつけ、その拍子に声が漏れる。


「あ…っ」



まずい…


慌てて口を手で押さえて、中を確認。