「…僕はもともと、誰かのために作ることをやってないから」


「え、あ…、そう…なのか」


「悪いけど他の人に頼んで」



それだけ言って出て行ってしまった。

いっきに穏やかでは無くなった教室内。



「やっぱあいつはそーいう奴だよな」


「どーせオレたちのことを下に見てんだよ」



誰かの吐き捨てた声が、戻りつつあったクラスの糸を切ってしまったみたいに。


それまでの琥珀くんを知らないわたしには、彼らが持っていたイメージは分からない。

わたしにとってはやっぱり今でも神様みたいな人だから。


掴もうとしても掴めない、掴みたくても進んで行ってしまう、それが神様。



「やろーよ、練習」



すべてのことに対する諦めムードと、男たちの不仲ムードをパッサリと立ち切るような声だった。

それは、わたしから少し離れた席に座っている彼の幼なじみ。



「みんなが思ってるより優しい奴だから、あいつ。だからそんな言ってやんないでって。
確かに昔から偏見を持たれやすいけど……誰も参加しようとしないカンナの練習に付き合ってやってるくらいだよ?」