「琥珀くんっ、今日の練習は───」


「ごめん。…今日は予定があって」


「あっ、そっか!じゃあ俺は壁とキャッチボールしとく…!」



それから毎日では無かったけれど、週に何日かだけでも参加してくれた琥珀くん。

しかし今日は予定があると、ショルダーバッグを肩にかけた彼は教室を出て行こうとした。



「あっ、あのさアララギ!!」



呼び止めたのは、琥珀くんとそこまで関わりを持っていなかったクラスメイト。

さすがにわたしも気になった。



「…なに?」


「アララギに頼みたいことがあんだけどさ…」



頼みたいこと…?

って、なんだろう。


たぶん、そのクラスメイトは。

彼がわたしと関わっているところを見て、それまで持っていた蘭 琥珀に対するイメージが薄れていってしまってたんだと思う。



「よかったら、俺たちに曲を作ってくれないか……?」



ざわっと、なぜか教室内が静まりながらもどよめいた。


彼が有名な作曲家の息子ということを知っているから、だろうか。

それとも彼が作った曲はすでに世に発信されていたりするんだろうか。