たとえ人数が絶望的でも、ちゃんと時間は守るんだわたしは。

16時半、ほとんど使うことのなかった用具を倉庫まで戻し、荷物が置いてあるベンチに戻る途中。


ひらりと、琥珀くんのジャージのポケットから1枚の何かが落ちた。



「……きれいな…ひと」



2つ折りにされていて、そこまで意識的に開かなくとも重力と風で中身がチラッと伺えてしまった。



「っ!」


「わっ!あっ、ごめん!」



バッ!と、奪われる。


あまりよく見ることができないなかでも、それはハッキリと記憶に残った。


なにかのコンサート詳細が書かれた広告っぽくて、そこに載っていた女性。

スポットライトが当たったステージに立つ、ドレスアップ姿でブロンド髪を揺らせた美しすぎる人。


歌姫、女神様、誰もが無意識にもそう思うだろう。



「だ、誰だって好きなアーティストとかは居るもんね!うんうんっ」


「………」



USAって書いてあった。
端に、USAって。

アメリカで活動しているアーティストさんなのかな。


わたしは必死に納得して、また琥珀くんの背中を眺めることになった。