「こんなんじゃ今年の体育祭も無理そうだね」
「えっ、体育祭?」
「今年はなんの競技になるんだろ。いつもひとつの種目にクラスが団結して全身全霊を注ぐのがうちなんだけど、
まあ去年もボロボロだったよ俺たちのクラスは」
芸術性あふれるバンドコースは、手先の器用さがなぜか運動に活きない。
なかには頼くんやムツミのように得意な生徒もいるのだが、それは稀(まれ)ということだ。
ちなみに琥珀くんがタイムリーを打った瞬間のわたしの喜びようは、きっと過去イチだった。
「先生っ!!」
ここでわたし、覚悟を決める。
ため息を吐きながら教室に戻ろうとしていたクールハンサムの腕を強引にも掴んで引き留め、見上げた。
「いてえよ。もっと敬え俺を」
「先生っ、今年の体育祭競技!クラス対抗野球で決定だから!!」
「…それは俺たち教師が決めんだよ」
「理事長の孫だよ俺っ!じいちゃんにも言っとくしっ、先生は職員会議でも言っといて!」
「もっと敬え俺を」