賑やかな声たちが遠くなっていく。

視界を遮られたカーディガンのなか、ふわり、またふわりと、わたしの身体は宙に浮いているような感覚が続いていた。



「失礼しまーす」


「ん?どうかしたかい?怪我人かな…?」


「あーっと、とくには大丈夫そうなんで。先生が出るほどのことじゃないや」


「いや、でも…、担がれているよ…?」



保健室の先生から向けられる怪しげな目まで上手くかわそうとしているんだろう。


どうしよう、良かったって思っちゃった…。

あんなに男だから男だからって言っておいて、この人にだけでも女だとバレていて良かったって。



「ね、カンナ」


「あっ」



スルっと、視界をずっと隠し続けてくれたカーディガンが取られてしまう。


見慣れない明るさと、しっかりわたしの身体を持ち上げてくれている腕。

すぐ近くにある御堂 頼の整いすぎている顔ひとつ、初めて見る穏やかそうな保険医ひとつ。



「君は転校生の子かな?大丈夫かい?」


「…は、はい。まったく問題…なく」


「そう。実は僕はこれから職員室で電話対応があってね、ここは御堂くんに任せていいかな?」


「おっけーでーす」