お母さんとお父さんからは毎日のように連絡が来るし、じいちゃんもたまにこの学校に顔を出すっぽいし。
だから寂しさはあまり無くて。
「いやいやっ!あぶねーだろ!」
「え?」
「カンナひとりって、なんかあったらどーすんだよ!」
「ないよ?学校から徒歩5分だし、一応オートロックだし!」
「そーいう問題じゃなくて!!」
ムツミはたぶん、優しいヤツではあると思う。
いつでも全力というか、素直というか、わたしのシュークリームであんなに喜んでくれたし。
今も心配してくれる表情は、わりと真剣だった。
「へーき。俺、…男だからっ」
男だから、平気なんだよ。
俺は男なんだから、ここに通っている。
わたしが男だから琥珀くんも話してくれるんだ。
「なんでそこまでして、この高校に転校してきたの」
「…え…?」
重箱のおかずを少しずつ口にしていた琥珀くんは、動きを止めて静かに聞いてきた。
琥珀くんの声って、すごく儚くて。
聞き逃すと後悔しちゃうような気がして、わたしは何としてでも耳に入れようとする。