「琥珀は金持ちの坊っちゃんだから。使用人にいつも持たせられてんの」
説明してくれた頼くんいわく、それでも琥珀くんは無理やりにでも渡してくる重箱から逃げ続ける日が多いみたいなのだけど。
今日はどういうわけか持たせられちゃったんだと。
なにその毎日…。
あ、でもそういえば、琥珀くんの親は有名な作曲家だとムツミは言ってたっけ…。
「すごい豪華…!えっ、毎日こんな感じなの!?」
パカッと開けられた蓋。
色とりどりなおかずがズラーッと。
「……って言われるから僕は嫌なんだ」
「いいなあっ。俺なんか一人暮らしだから、逆にお弁当が恋しくなってる!」
まだ2日目なのにね!あははっと。
呑気に笑っているのはなぜかわたしだけで、すぐに「おまえ一人暮らしなの?」と、頼くんが聞いてきた。
「うんっ。一人暮らし!」
「理事長の孫なんだろ?お前のとこも立派な家で使用人とかさ、いるんじゃないの?」
「そんなでもないよ?ただ、この学校は実家から遠いってのもあるし、経験としてもひとりでやってみようと思って!」