頼くんの制服のポケットに入っていたシュークリーム。
スッと取って、ムツミの前に差し出した。
「…いいのか?」
「おうっ!あ、ごめん笑顔向けちゃった」
「……くそ、俺は女が好きだろ…、おい、なあ…」
わたしがこうしてムツミに渡したのは、理由がある。
もちろん昨日のお礼もあるけれど、わたしはいろんな人にこうしてラッピングして渡すんだよってことを植え付けるため。
そうすればクラスメイトたちにも「カンナはそーいうやつ」って、思ってもらえるかもしれないから。
「ムツミ、男から貰ってそんな嬉しそうな顔してるお前もなかなか気色わるいよ」
「っ…、うっ、うるせー!!」
「まあでも残念だけど、カンナのことは俺のほうがよく知ってるから」
また、ふわりと腕が回った。
ゴクリと息を飲んでしまって感じる、良からぬ危機。
「どういうことだよ…?」
「んー。こいつがひみつの王子様ってこと、かな?」
「はあ?」
たらりと流れる冷や汗、硬直する身体。
意味ありげにクスッと笑った御堂 頼。
どうやらクラスメイトたちにはバラしていないようだが、彼は彼で別の楽しみを見つけてしまったようなのだ。