ってことは、頼くんは今のところはお口チャックしてくれてる……?



「うおっ!」


「わっ!ごめん…!あ、ムツミ!」


「っ…!!」



昨日の休み時間から様子がおかしいのだ、この男は。

授業中も何度かチラチラと視線を感じて、わたしが合わせに行くと大袈裟にも逸らされる。


今だって、ただ名前を呼んだだけ。

それだけでガタガタッと、わたしに背を向けながらドアに寄りかかった。



「ムツミ、昨日は本当にごめん。でもそこまで避けなくても…」


「いーからっ!いいから俺の名前を呼ぶなっつーの!!」


「え、なんでっ」


「あと俺に笑顔を向けんな!!わかったか、俺に笑顔を向けんなよ…!!!」


「………」



そんな2回も言われたなら聞くしかない…けど。

そこまで分かりやすく避けられると傷つくものだ。


とりあえずうなずいてムツミを見送ったわたしは、次に現れた男によって背筋が凍る。



「おはよ」


「っ……!!!」